不動産取引におけるIT重説の概要、メリット、実施手順を解説します。オンラインでの重要事項説明で取引をスムーズに進めましょう。
不動産取引において必ず行われる重要事項説明を、ZoomやTeamsなどのビデオ通話を活用してオンラインで実施する仕組みがIT重説です。2017年に賃貸取引で解禁され、2021年からは売買取引でも全面的に利用可能となりました。本記事では、不動産のIT重説について基礎知識から具体的なやり方、メリット、そして実施時の注意点まで詳しく解説します。物件探しをしている方や不動産業務に携わる方にとって、IT重説の正しい理解は取引をスムーズに進めるために欠かせません。
不動産業界におけるIT重説の基礎知識
この章では、IT重説の基本的な定義や導入された背景、対象となる取引について解説します。従来の対面方式との違いを理解することで、IT重説の特徴と活用場面が明確になります。

IT重説の定義
IT重説とは、宅地建物取引業法で定められた重要事項説明を、インターネットを介したビデオ通話で行う方法です。重要事項説明は不動産の賃貸や売買の契約前に、宅地建物取引士が買主や借主に対して物件の権利関係や取引条件などを説明する法定手続きになります。
IT重説では双方向の音声と映像を確保できる環境があれば、店舗に出向くことなく自宅やオフィスから説明を受けられます。
国土交通省が策定したガイドラインに基づき、宅地建物取引士証の提示や書類の確認など、対面と同等の要件を満たすことで法的に有効な説明となります。2024年12月にはマニュアルが改訂され、通信トラブル発生時の対応方法も明確化されました。
制度導入の背景
IT重説が導入された背景には、不動産取引における利便性向上とデジタル化推進の流れがあります。従来の対面方式では、契約希望者が不動産会社の店舗まで足を運ぶ必要があり、遠方に住んでいる方や仕事が忙しい方にとって大きな負担となっていました。
国土交通省は2015年から2017年にかけて社会実験を実施し、賃貸取引におけるIT重説の有効性を検証しています。実験結果を踏まえ、2017年10月に賃貸取引で本格運用が開始されました。その後、売買取引についても社会実験が行われ、2021年3月から全面解禁となっています。
新型感染症の流行も非対面取引のニーズを高め、IT重説の普及を加速させる要因となりました。2026年施行予定の法改正では、電子契約との組み合わせによる完全オンライン取引の実現がさらに進む見込みです。
対象となる取引
IT重説は、賃貸取引と売買取引の両方で利用可能です。ただし、それぞれ運用開始時期が異なり、対象となる当事者にも条件があります。
| 取引種別 | 運用開始時期 | 対象者 |
|---|---|---|
| 賃貸取引 | 2017年10月 | 借主(個人・法人) |
| 売買取引 | 2021年3月 | 買主(個人・法人) |
IT重説の対象は主に買主や借主であり、売主や貸主への説明は含まれません。また、宅地建物取引業者間の取引については別のルールが適用されるため、一般消費者向けの取引とは区別して理解する必要があります。
対面方式との違い
IT重説と対面方式の最も大きな違いは、説明を受ける場所の自由度にあります。対面方式では不動産会社の店舗や指定の場所に出向く必要がありますが、IT重説なら自宅やオフィスなど任意の場所で説明を受けられます。
説明の内容自体は対面方式と変わりません。宅地建物取引士が重要事項説明書に基づいて物件の所在地、権利関係、法令上の制限、契約条件などを説明します。IT重説では、宅地建物取引士証を画面上で提示し、相手方が氏名や写真を確認できるようにする必要があります。
通信環境の整備という点では、対面方式にはない準備が求められます。安定したインターネット回線、Webカメラ、マイク、そして音声と映像を双方向でやり取りできるツールの用意が必須となります。通信トラブルが発生した場合の対応手順も、事前に確認しておくことが重要です。
不動産会社におけるIT重説のメリット
この章では、IT重説を導入することで不動産会社が得られる具体的なメリットについて解説します。業務効率化から顧客満足度向上まで、多角的な視点でIT重説の利点を整理します。

業務の効率化
IT重説の導入により、不動産会社の業務効率は大幅に向上します。従来の対面方式では、顧客が来店できる時間帯に合わせてスケジュールを調整する必要がありました。IT重説なら、営業時間外や土日でも柔軟に対応でき、1日に実施できる重要事項説明の件数が増加します。
宅地建物取引士が店舗から移動する時間が削減され、その分を他の業務に充てることができるため、契約リードタイムの短縮にもつながります。
また、重要事項説明書の電子交付と組み合わせることで、書類の印刷や郵送にかかる手間も省けます。2026年に予定されている法改正では電子契約との連携がさらに進み、ペーパーレスによる業務効率化が一層加速する見込みです。
商圏の拡大
IT重説は地理的な制約を取り除き、不動産会社の商圏拡大を可能にします。従来は物件所在地から遠い場所に住む顧客に対して、重要事項説明のためだけに来店を求めることが難しいケースがありました。IT重説なら遠隔地の顧客にも対応できるため、地方物件や投資用物件の取り扱いがしやすくなります。
海外在住の日本人や、転勤で引っ越しを控えている方など、物理的に来店が困難な顧客層へのアプローチも容易になりました。IT重説対応物件として訴求することで、競合他社との差別化要因にもなり得ます。
全国各地の物件を扱う不動産ポータルサイトとの連携においても、IT重説対応は大きなアドバンテージとなっています。
コストの削減
IT重説の導入は、不動産会社にとってさまざまなコスト削減効果をもたらします。最も直接的な効果は、移動コストの削減です。宅地建物取引士が顧客のもとへ出向いたり、顧客が来店するための交通費を会社が負担したりするケースでは、その費用が大幅に減少します。
- 交通費や車両維持費の削減
- 重要事項説明書の印刷費や郵送費の削減
- 来客対応のための店舗運営コストの最適化
- 人件費の効率的な配分
これらのコスト削減効果は、特に複数の店舗を持つ不動産会社や、広いエリアをカバーする企業において顕著に表れます。削減した経費を顧客サービスの向上や新規事業への投資に回すことも可能です。
顧客満足度の向上
IT重説は顧客にとっても多くのメリットがあり、結果として顧客満足度の向上につながります。来店の手間が省けることで、忙しいビジネスパーソンや育児中の方、高齢者など、外出が難しい方でもスムーズに契約手続きを進められます。
感染症対策として対面を避けたいというニーズにも応えられるため、安心感を持って取引に臨んでもらえます。自宅という落ち着いた環境で説明を受けられることから、内容の理解度が高まるという声もあります。
さらに、録画機能を活用すれば後から説明内容を見返すことも可能です。これにより契約内容の確認がしやすくなり、トラブル防止やコンプライアンス強化にも寄与します。顧客からの信頼獲得という観点でも、IT重説への対応は重要な取り組みといえます。
不動産取引におけるIT重説の実施手順
この章では、IT重説を実際に行う際の具体的な手順について解説します。事前準備から当日の説明実施まで、各ステップで押さえるべきポイントを整理しています。

事前準備の実施
IT重説をスムーズに行うためには、事前の準備が欠かせません。まず、顧客に対してIT重説を利用することへの同意を得る必要があります。国土交通省のガイドラインでは、IT重説の実施について明確な承諾を記録に残し、いつでも対面方式に変更できることを伝えるよう求めています。
通信環境の確認も重要な事前準備の一つであり、パソコンやタブレット、Webカメラ、マイクが正常に動作するかをテストしておくことが推奨されます。
使用するビデオ通話ツールについても、顧客側がスムーズに接続できるよう、アプリのインストール方法や接続手順を事前に案内しておきましょう。ZoomやTeams、Google Meetなど、一般的に普及しているツールを選ぶと顧客の負担が軽減されます。
必要書類の送付
IT重説を実施する前に、重要事項説明書を顧客へ送付する必要があります。送付方法は郵送でも電子交付でも構いませんが、説明当日までに顧客が内容を確認できる状態にしておくことが求められます。
| 送付方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 郵送 | 確実に届く、紙で確認しやすい | 到着まで時間がかかる |
| 電子交付 | 即時送付が可能、ペーパーレス | 受信環境の確認が必要 |
電子交付の場合は、PDFファイルの改ざん防止措置や、顧客が確実に受け取ったことを確認する仕組みを整えておくことが望ましいです。説明当日には、顧客の手元にある書類と宅地建物取引士が参照する書類が同一であることを確認します。
オンライン説明の実施
IT重説当日は、まず宅地建物取引士が宅建士証を画面に提示することから始めます。顧客が氏名と顔写真を確認できるよう、カメラの位置や照明を調整し、はっきりと見える状態を作りましょう。
重要事項説明書の内容を一項目ずつ丁寧に読み上げながら説明を進めます。オンラインでは対面よりも意思疎通が難しくなりがちなので、適宜「ここまでで質問はありますか」と確認を入れることが大切です。
説明中に顧客が書類を見ながら確認できているか、画面共有機能を使って同じページを参照しているかをチェックします。説明終了後は、顧客から内容を理解した旨の確認を得て、必要に応じて録画データを保存します。
実施時の注意点
IT重説を適切に実施するためには、いくつかの注意点を守る必要があります。まず、通信トラブルへの対応を事前に取り決めておくことが重要です。2024年12月に改訂された国土交通省のマニュアルでは、通信が途切れた場合の再接続手順や、対面方式への切り替え判断基準が示されています。
- 通信トラブル発生時の連絡手段を事前に確認する
- 音声や映像が途切れた場合は説明を一時中断する
- 回復しない場合は日程を改めるか対面方式に変更する
- トラブルの記録を残しておく
また、宅建士証の提示が不十分だったり、顧客が書面を改ざんしていたりすると、IT重説は無効となる可能性があります。双方向でのコミュニケーションが成立していることを常に確認しながら、丁寧に手続きを進めることが求められます。
まとめ
IT重説は不動産取引における重要事項説明をオンラインで行う仕組みであり、2017年の賃貸取引解禁を皮切りに、現在では売買取引でも広く活用されています。店舗に出向く必要がないため、遠方に住む方や忙しい方でも柔軟に契約手続きを進められるようになりました。
不動産会社にとっては業務効率化、商圏拡大、コスト削減、顧客満足度向上といった多くのメリットがあります。一方で、事前の合意取得、書類の確実な送付、宅建士証の適切な提示、通信環境の整備など、実施にあたって押さえるべきポイントも存在します。
2026年施行予定の法改正により、電子契約との組み合わせによる完全オンライン取引がさらに進む見込みです。不動産業界のデジタル化が加速する中、IT重説への対応は競争力を高めるうえで欠かせない取り組みとなっています。
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